OICA(国際自動車工業連合会、本部パリ)が認定するモスクワ国際モーターショー(以下、MIAS)は、これまで商用車を含む総合ショーとして開催されてきたが、2008年より乗商を分離し、偶数年に乗用車ショー、奇数年に商用車ショーを開催する。2009年4月に予定される商用車ショーは、従来から開催されていた別の主催者が運営する商用車専門のCOMTRANSに統合し開催される。
今回ショーの主催者は、OAR(ロシア自工会、Association of Automakers)で、乗商分離後初の乗用車ショーということもあり、成長著しいロシア自動車市場における同ショーの状況を視察した。
MIAS 2008は、8月29日(木)から9月7日(日)までの10日間の会期で開催された。会場は、モスクワ市中心から北西20km程に立地するクロッカス・エキスポセンター。同展示場は、2004年3月にオープンした新しい施設である。3つのパビリオンから構成され全19ホールの展示場面積は21.5万㎡と広大である。また、6,000人を収容できるコンサートホールも併設されている。ここ数年ロシアの自動車市場は拡大を続けており、今回のモスクワショーには世界の主要ブランドのほとんどが集まった。
MIASの総展示面積は120,000㎡超となっており、乗用車部門がパビリオン3(63,000㎡)、部品部門がパビリオン2(50,000㎡)、また屋外展示場8,000㎡も活用して、世界30カ国から1000社以上が参加した。乗用車の主要ブランドではAlfa Romeo, Audi, BMW, Cadillac, Citroën, Chevrolet, Chrysler, Daewoo, Dodge, Fiat, Ford, Hummer, Honda, Hyundai, Infiniti, Isuzu, Jaguar, Jeep, Kia, Land Rover, Lexus, Mazda, Mercedes-Benz, Mini, Mitsubishi, Nissan, Opel, Peugeot, Porsche, Renault, Saab, Seat, Skoda, Ssang Yong, Subaru, Suzuki, Toyota, Volkswagen, Volvoの39ブランドを数え、ロシアの国産メーカーではGAZ, UAZ, VAZの3ブランド、中国からはBrilliance(華晨汽車)、BYD(BYD汽車)、 Chery(奇瑞汽車), Geely(吉利汽車), Great Wall(長城汽車)の5ブランドが出品した。
8月29日(金)からの一般公開に先立ち、26日(火)からのプレスデーでは、日系メーカーを含む8社からワールドプレミア9台(Mazda Kazamai、Lexus LS 460 All-Wheel Drive、BMW X5 Security、Audi A6, Audi RS 6、Mitsubishi Pajero Sport SUV、Renault Symbol、Skoda Superb V6 3.6、Citroën C4)が発表された。
プレスブリーフィングでは、若手のジャーナリストが目立った。各社のプレゼンテーションでは、ダンスパフォーマンスが多く見られ、ロシア民謡である「ポーリョシカ・ポーレ」を大合唱したマツダブース、アシモがプレゼンテーションに登場したホンダも印象的であった。関係者によると、ロシアの自動車市場は拡大を続けており、現地資本によるディーラー設立も多いが、数年で投資回収ができる環境にあるそうだ。
会場内では、日産がブース内にGT-Rの実車シミュレーターを展示した。またトヨタブースではF1を展示したり、ランドローバーが展示ホール前の駐車場に4×4の試乗コースを設定したりするなど、一般来場者の集客も意識した展示構成やアトラクションも見受けられた。なお、展示場内はブースの高さが5.5m、音量規制は85デシベル以下に制限されている。また、展示ブースと通路との段差にはスロープを設定しているブースも見られたが、必ずしも徹底されていなかった。ブース間の共通通路は3〜5m程に設定されたが、週末などはおそらく混雑で埋まってしまうのではないかと思われた。
会場までは、クルマと電車でのアクセスがメインとなるが、駐車場は約26,000台分と豊富に用意されている。また会場より徒歩5分程の場所に地下鉄駅もある。パビリオン3の2階のコンコースには、ビュッフェスタイルのレストラン(ピザ、肉・魚料理、海苔巻き、ポテト、サラダ、ビール、ソフトドリンク)が6ヶ所程ある他、パビリオン1に隣接したショッピングモール内には、ブティック、レストラン、銀行なども併設されている。
主催者によると、自動車に対する関心が高いので、モーターショー開催を一般向けにあまり大規模に告知しておらず、TVCMを少々打っている程度とのことであった。 また、今回の来場者目標が、東京モーターショー(07年・142万人)、パリモーターショー(06年・143万人)を凌ぐ150万人であることや出品ブランド数の豊富さからも、今後も注視して行きたいショーのひとつである。(閉幕後、主催者は、入場者総数160万人に達し、世界最大の観客動員規模のモーターショーになったと発表している。)
会場となったクロッカスエキスポは、将来的にシネコンや高級ホテル等を組み合わせた「クロッカスシティー(複合商業施設)」として開発される計画もあり、エンターテインメント・シティーとしての発展も期待される。
- クロッカス・エキスポセンター
- トヨタ:ハイブリッド Xコンセプト
- 日産:キューブEV
- マツダ:カザマイ
- ホンダ:アシモ
- スバル:インプレッサ